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ゲーム基板を自己修理 2

ゲーム基板を自己修理と言うコーナーを作りましたが、あれからも新たにトラブッた基板が
出ています。ここ数ヶ月で自己修理を行った基板のネタが溜まってきましたので、今回新たに
”ゲーム基板を自己修理 2”で紹介します。自己修理なので簡単なものに限られるのですが。



■ サミー アトミスマザーを修理

主催者はサミーのアトミスウェイブマザーを入手しました。このボードは元から難あり品の
でした。難点はVGAコネクタからの出力は問題ないが、JAMMAカードコネクタからの映像
が出ない、と言うもの。VGAから映像が出れば、実用上支障はありません。しかし、どうせ
なら不具合点は無しにしたいもの。そこで修理可能かどうか調査してみることにしました。

アトミスマザー開梱


映像が出ない場合は同期信号に問題があることが多いので、まずはJAMMAのSYNC信号
の部分を見てみます。パターンを追うとチップ型のトランジスタらしき部品にたどり着きました。
良くわかりませんが、部品の端子がオープンになっています。明らかに不良と思われますが
部品の型番はチップ部品と言う事もあり、何なのかまるで分かりません。

アトミスマザー裏側


どっち道、元から映らないので適当に部品を変えて様子を見ます。手元にあったよく似た
外観のトランジスタ(2SA1298、下の写真左)に交換してみました。結果は何も映らず。
そこで次は別のトランジスタ(2SC3265、下の写真右)に交換してみます。すると・・・。

トランジスタ交換


今度は映りました。写真では15khz対応の液晶に映しています。

アトミス15khz出力



■ 任天堂 スーパーパンチアウトを修理

主催者は過去にゲーム基板をまとめて購入しました。枚数は16枚ほど。価格が驚くほど安
かったのです。しかし届いてビックリ、10枚ほどが不良品でした。購入したショップに
連絡すると「リストを作成した担当が作成後に退職したため、確認が行き届かなかった。
送り返してくれ」との事。それで返金してもらいましたが、送り返さなかった基板もあり
ます。それがスーパーパンチアウトです。

なぜ不良品なのに返品しなかったのかと申しますと、とにかく安かったのと「この機会を
逃すと2度と手に入らないぞ」と思ったからです。ちなみに不具合内容は、スーパーパンチ
アウトは上下2画面のゲームなのですが、上画面がバグっていました。表示は上がステータ
ス画面、下がプレイ画面です。下画面がOKなので、取りあえずゲームプレイは可能です。
それで返品をやめたからには不具合を解消すべく基板を確認します。すると何やらまずい
修理の痕がありました。ICを引っこ抜く時に基板のパターンをハデに破壊しており、それ
をジュンフロン線で修理してあるのですがまだ不完全な様で、この部分を押すとバグりが
変化しました。対象のICは74LS244。それも1個では無く3個やられています。そこで
この部分の配線をやり直します。配線図などありませんから、この部分のICを抜き取り、
パターン図を作成します。下の図が作成したパターン図です。

スーパーパンチアウトパターン切れ箇所


今回の修理は配線の本数が多い上に基板の裏表両面です。基板の見える部分にジャンパー線
を飛ばすのはみっともないですから、こちらはジャンパー線ではなくパターン修繕にて接続
を行いました(下の写真参照)。

パターン切れ部品面


一方裏側は普通にジャンパー線が走っています。本来ならば基板表面と同じ様にパターン修
繕を行いたいところですが、基板の裏表をパターン修繕してスルーホールを繋ぎ、更にICソ
ケットを実装するとか不可能です。恐らくICソケットを実装する時にパターン修繕の半田が
取れてしまいます。それで裏はジャンパー線を飛ばしましたが、ICソケットがある都合上、
一度修繕を行ったら後でやり直しを行うのは不可能です。起動して症状が改善しない場合は
また全てばらして1からやり直しです。

パターン切れ半田面


起動してみると、幸いにもバグりは改善されていました。まあ、たまにバグりが出るのです
が、LS244を押さえるとすぐに改善しますから良しとしましょう。いまさらですが、この基
板は液晶モニター(31khz)との相性がメッチャ悪い。写真では分かりませんが、中々映らな
い上に映ったと思ったらチカチカとフラッシングしています。

スーパーパンチアウト画面


なお、スーパーパンチアウトは初代パンチアウトのバージョンアップ版なのですが、CPUの
載っている上基板はもちろん、今回修理した下基板も互換性はありません。下の写真で左が
初代パンチアウト、右がスーパーパンチアウトです。

初代&スーパー基板比較 表


上基板はカスタムされているので流用は出来ないと分かりますが、下基板などどう見ても同
じに見えるのですが、入れ替えたところ全く動きませんでした。

初代&スーパー基板比較 裏


■ スーパーパンチアウトまた修理

スーパーパンチアウトの表示不良は取りあえず改善しました。しかし上記にある様に時折画像
がバグります。その時はICを手で押して正常画面に持っていきました。しかし徐々に不良頻度
が高くなり、ICを手で押しても中々改善しなくなりました。それどころか今まで問題の無かっ
た下画面まで不具合が出始めました。不具合内容はリングサイドのNINTENDOの文字が無い
とか、試合開始時のレフリーの画像がヘンとか。主催者的にはこれはもう、修理に出したい気
分。しかしこの基板には上記パターン切れと言う、きっつい修理痕があります。自分ならこん
な修理痕のある基板の修理などしたくない。なので数年間修理に出すのをためらっていました。

上で修理した74LS244のパターンもだんだん具合が悪くなってきたし、この際この部分をもう
一度やり直し、その上で今後の事を考えよう、と決心しました。そうなるとスルーホールをどの
様にするか考えなくてはなりません。過去に個人でスルーホール基板を作成するためのピンの様
な物を見た事があるのですが、今は修理用に極小のハトメがあるらしい。なので主催者もそれを
入手してスルーホール修理にトライします。下の写真が入手したハトメ。マックエイト製。




ハトメを入手してから気付いたのですが専用のポンチがあるらしい。しまった。これも買っと
くべきだった。それで今から注文するか、とも思ったのですが、ポンチには下の受け用と上の
打ち込み用があります。打ち込み用は、はめたハトメを広げるのに絶対必要です。一方下用は
打ち込み用でハトメを叩く時に下で受ける物なのですがこれが高価。絶対あった方がいいとは
思うが(特に大きな基板の中央辺りに使用する時)入手はためらう。そこで物は試しに自分で
作って見る事に。下の写真が作ったポンチ。ポンチの素材はステンレス。左が打ち込み用、
中が受け用。右は製作したポンチの全体像。ポンチの他に基板外周の受けも作りました。




ポンチが出来たので早速試し打ちをします。下の写真が試し打ちの結果。番号はそれぞれ1回
目~4回目の結果です。一回目は下側、打刻側とも潰れています。2回目では打刻側の穴のみ
が潰れており、3回目ではややマシに。4回目でまずまずの状態に持って行けました。これは
ポンチ先端の形状を4回修正したと言う事です。




いよいよスーパーパンチアウトの基板で実証します。下の写真が以前の修理を全て取り去った
元の状態。こりゃひどい。




これをハトメを使って修繕していきます。パターンの引き回しはリード線の芯線を使用。




パターン修繕が完了しました。ジャンパー線が無くなったので裏側(下の写真右)が超スッキリ。




後はこれにICソケットを付けて完了です。それで動作確認しましたがバグっていた。そんな
バカな・・・。と思い、配線を全てチェックすると短い接続を1本忘れていた。それを接続す
ると今度は正常動作。ハトメの威力は大したもので、超安定動作。これで上画面はもう安心。
しかし今は下画面が・・・。下画面の修理は当初の予定通り?プロに依頼する事にしました。

下の写真がハトメによるパターン修理が完了した74LS244の部分です。外から見た感じでは
以前と大して変わらない。




それで修理依頼から帰ってきたスーパーパンチアウトは、入手して初めて見る超安定状態。
いや~この状態をずっとキープしたいもんです。そこで思いつきました。基板は大型、3枚重
ねでギシギシたわみます。今までの経験から、この様な状態で使用し続けるといずれ不具合を
起こしそうな気がします。やはり大型の基板は適当なケージに入れて保護するのが得策。なの
で次にケージを作りました。基板が大きい事もあり、ケージと言うよりはフレーム。フレーム
のサイドに基板レールを取り付け、基板を保持しています。




そうなると任天堂基板特有の色反転基板と音声アンプも小さく作ってフレーム内に収めたい。
そこでこれも新たに作り直します。下の写真右が今まで使っていたやつ。これでは高さがあり
すぎるので出来るだけ薄く作る必要があります。今まではICによる映像アンプと色反転の組み
合わせでした。今回の色反転は純正回路を採用。ただモニター2つ分の回路を組むにはスペー
スがきつく、ギチギチになりましたが何とか収まりました。




全ての修理が完了したスーパーパンチアウト基板。フレーム採用で保管や使用時の扱いがラク。
ただフレームがある分、保管スペースが以前より必要になってしまった。




■ データイースト ガンボールを修理

主催者がずっと探していた基板のひとつにデータイーストのガンボールがあります。この基板
は1992年ごろのゲーム雑誌ゲーメストに「発売はもう少し先」と言う形で紹介されており、その
時から「コレは絶対入手しなければならん!」と心に誓っていたのです。しかし中古で売って
いるのをさっぱり見かけません。それでも過去に2回ほど基板屋のリストに掲載されているのを
発見したのですが、1度目はリストに載せたものの入荷しなかった?らしく入手は叶わず。2度目
はそれから10年後に発見。その時は高価だったのでとりあえずスルーしたら次の週にはリスト
から消えていました。買うやつは買うんだな、と思ったものです。余談ですが、以前ある基板屋
に電話をした時、ガンボールについて聞いたところ「うちのお客さんはみんな持っていますよ」
と言われ軽くショックを受けたものです。

そして3回目ですが、この時はついに決心、購入に踏み切りました。そんなわけで入手した
ガンボールですが動作させてみると、3人同時プレイ、難易度設定はベリーハード、ゲーム
スタートはショットボタンと兼用、と言う設定が固定で、DIPスイッチでは変更が出来ません。
ただ、ロケでの運用に必要なコイン設定と画面のフリップは動作しました。このゲームは正式
には発売しなかった?と言ううわさもあり、それを考えると設定変更が出来ないのも普通か?
と言う気がします。そんなわけで暫くそのままにしていましたが、やっぱりヘンだろ!と思い、
基板を調べてみる事にしました。調べるのは当然DIPスイッチの部分です。まずは断線を調
べましたが、特に異常は無し。次はDIPスイッチからの信号がICに入っているかですが、信号
自体は入っている様です。ただ、DIPスイッチを動かしてもICの入力部のHi、Loが変化しませ
ん。そこで思い切ってDIPスイッチの裏に抵抗を取り付け、強制的にプルダウンさせます。

DIP裏強制プルダウン


すると設定が変化しました。オイオイただの抵抗アレーの不良かい、と言うわけで適当な
抵抗アレーを今の部品の裏につけてみます。その結果、アッサリ改善しました。

抵抗アレー仮取り付け


原因が分かったので悪い部品を取り外し、良品と取り替えて修理完了です。

抵抗アレー交換


ガンボールについて、簡単にゲーム内容を説明します。下の写真がガンボールの基板です。

ガンボール基板


ゲームの内容はほぼスマッシュTVです。敵を打ち倒して高額商品をゲットしよう!と言う
ノリ。スマッシュTVでは司会者が出てきますが、ガンボールでも司会者が各ステージの
開始時に登場します。このゲームが個性的なのは、フィールド上にピンボールのフュー
チャーがある事と、自分が時折ピンボールのボールになっちまう事!ピンボールのフュー
チャーは自分が撃つ以外にも、たとえば敵を撃つと丸まってごろごろと転がって行くので、
そこでうまくスピナーに当てたり、ホールに落としたりすると、アイテムや高額商品をゲット
できます。

ガンボールプレイ画面



■ コナミ 沙羅曼蛇を修理

主催者は沙羅曼蛇の上基板のみを入手しました。下基板はグラディウスと共通の基板です。
グラディウスの修理の項目で書いていますが、主催者が入手した基板はトラブルが多く、
やたら修理が多かったので下基板だけを別途入手しておいたのです。それが今回使えます。

下基板が同じと言いましても、グラディウス用と沙羅曼蛇用では若干違う部分があります。
厳密には基板のバージョンなども異なっているのですが、一番の違いは接続コネクタの
方向キーです。ピン配列は同じなのに方向キーの向きが逆になっています。そのためこの
ままでは刺さりません。しかし方向キーの出っ張りを削り取ればそのまま使用できました。

下基板コネクタ比較


さて、沙羅曼蛇ですが、実はこの基板は故障していません。過去に修理した痕があり、
それがあまりに今一なのでもう一度やり直そう、と言うものです。その今一な部分とは、
まず入力部のフォトカプラがぶった切ってあり、半分だけ交換してあります。しかもその
部分がソケット化されて段になっています。(下の写真左)。また、抵抗アレーが一つ
欠品しています。さらに基板の裏ではジャンパー線が走っています。

沙羅曼蛇修理前


まずはフォトカプラを全部抜き取ります。元から付いているのは2401と言う型の物なので
すが、主催者は持っていないので2501と言う型の物に全て交換します。2501は高耐圧型
と言うだけで問題なく使用できます。フォトカプラを全部変えるのは見た目の統一感を出す
ためです。基板裏でジャンパー線が走っている部分は、どこで切れているのかと思ったら、
表側でカッターでパターンカットしてありました。それ以外にもプルアップ用の抵抗アレーが
なぜかソケット化されていたりします。これらをオリジナルに近づけるべく修正します。

部品抜き取り


修理はまずパターンの修正から行います。これにはリード線の芯線の一本を取り出し、
たたいて扁平にします。それをパターンに沿って半田付けします。欠品の抵抗アレーは
調べたところ2P側のミサイルに使われていました。プルアップされていないのでミサイル
が出っ放しです。この部分は故障していたと言えます。使っているのは4素子の内の一本
だけなので普通の抵抗一本を刺しておけばOKなのですが、ここも見た目を重視して抵抗
アレーを使います。ただ、手持ちに無かったので、8素子の物を切断して使用しました。

パターン修繕


それ以外にもクレジットが入らんと思ったら、こんなところにもカットが・・。

表面のカットがあった


下の写真がパターン修正&実装&基板を洗浄したところ。まずまずかな。

沙羅曼蛇修理完了


なお、沙羅曼蛇とか、セガのシステム16Aに使われているICソケットは接触不良を起こし
易い様です。映像不良の時、ソケットからROMを少し引っ張って起動すると改善される時
がありました。ICソケットを交換したいところですが、見た目が変わるので悩むところです。





■ タイトー スピカアドベンチャーを修理

今度はタイトーのTYPE-X用ソフト、スピカアドベンチャー(ジャンク品)を入手しました。
ジャンクの内容はシステムエラー900が出てそれ以上進まない、と言うもの。TYPE-Xは
ソフト本体であるハードディスクとセキュリティ用ドングルがセットなのですが、ドングル
の認識エラーの時に出るのがシステムエラー900です。要はゲームが立ち上がらない品
なのですが、ずっと探していましたし中々出ないソフトなのでとりあえず入手したのです。

スピカアドベンチャーソフト


システムエラー900で考えられるのは、①ドングルが壊れている、②ドングルが不一致、
③ドングルの接触不良、このあたりでしょうか。この中で主催者が対応できるのは、③の
ドングルの接触不良だけです。届いたソフトを早速TYPE-Xマザーにセットして起動した
ところ、やはりキチンと?システムエラー900が出ました。

エラーで読み込まず


手段としてはドングルを開いて中を見るしかありません。もしかしたら、半田のクラックが
発見されるかも知れません。ドングルのケースはメーカー修理に出す時の事も考えて、
キズを付けない様にそうっと開けます。メーカー修理が可能かどうか分からないのですが。

ドングル内部を見ても半田のクラック等は無い様です。しかしICチップが付いていると思
われる白いカードの内側を見ると、端子が浮いています。(下の写真中)なお、この写真で
ドングルの基板が曲がって見えますが、拡大撮影時のレンズの歪曲収差によるものです。

ドングル開梱


端子の浮きが原因か?というわけで、アクリルの小片にウレタンフォームを付けた物を
2つ作り、白いカードの部分を裏表両方から挟み込み、テープで固定して起動してみます。
結果は・・・。何も変わらず。やはりテープで固定したぐらいではダメか?と言う訳で、
テープの上からCクランプで押さえて再起動。すると・・・今度は読みこんだっ!ううむ。
ドングルの接触不良なのは間違い無い様です。そうなると次はCクランプ無しで起動する
様にしなければなりません。そこで考えるのが、接触不良の端子を半田付けする事です。

ドングル認識


しかし半田付けはドングル後面は可能だが、前面の方はパーツが込み合っていて殆ど
ムリ、何とかトライして半田を行っても、もし不具合が改善しなければその後の修正が
余計に大変になります。そこで白いカードをずらしてみる事にします。出荷時に差し込ん
だわけですから、ずらすことも可能ななず。カードチップはエポキシ系と思われる樹脂で
カチカチに固められています。これをペンシル型のリューターで少しずつ削り取ります。
下の写真左が削ってカードを少しずらしたところ。これなら半田付けが可能。しかし・・・
ちょっと待てよ・・・。

半田を付ける前にもっと確認した方が良さそうな気がします。そこで思い切ってカードを
全部抜いて見ます。それが下の写真の中と右。抜き取って分かったのは、最初パターン
が浮いている様に見えた部分は、実は接触端子がスプリング状になってカードの端子に
接触しており、それのクリアランスの部分でした。いや~半田付けしなくてよかった~。

接触不良クリーニング


原因が分かったのでカード及び接触端子をパーツクリーナーで洗浄して再度セットしま
す。当然カードに接着剤などは付けません。その後は安定起動する様になりました。

スピカアドベンチャー修理完了


さて、ここでなぜ接触不良になったかなのですが、理由は明白です。ドングル基板の
生産時には当然半田付けが行われますが、半田が溶けた時に煙が出ます。それが
端子に付着すると、半年~数年経過するころ接触不良を起こします。環境への配慮
から半田付け後の基板の洗浄をしなくなりました。そのために起こる症状なのです。


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